2006年7月11日

ワールドカップは、テロもフーリガンの暴力事件もなく、無事に終わりました。ドイツの政治家は、「うまくいった」と自画自賛。多くの国民が戦後初めてこぞって国旗を誇らしく掲げたことについても、ケーラー大統領が「好ましい愛国心だ」と褒めたたえるなど、満点評価。ふだんは自分たちに常に批判的なドイツ人たちも、手放しで喜んでいるようです。しかしスポーツの祭典は、終わりです。これからは社会保障など構造改革の茨の道が待っております。

北朝鮮によるミサイル実験は、ヨーロッパと異なりアジアで安全保障面での不安定要素が多く残っていることを、はっきり示しました。ふたたび米国を交渉の席に引っ張り出すための、北朝鮮得意の瀬戸際政策です。いわゆるrogue stateに対して、国連安保理の制裁決議や、日米の経済制裁がどの程度効果を持つのでしょうか。

日本の一部の政治家の間では、北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃できる能力を自衛隊に与えるべきだという意見がここ数日浮上しています。いずれ出てくるだろうとは思っていましたが、これは米国ブッシュ政権のイラク攻撃と同じ論法であり、アジアの緊張をいやがうえにも高めることになるでしょう。興味深いのは、韓国が北朝鮮の肩を持って、日本の先制攻撃能力論を強く批判したことです。この韓国の厳しい反応は、わが国が過去60年間に、歴史リスクを減らす努力を減らしてこなかったために、肝心なときにアジアの盟友がいないということを浮き彫りにしています。